大島紬
1300年の伝統を誇る本場奄美大島紬
フランス・ゴブラン織、ペルシャ絨毯と並ぶ、世界三大織物の一つといわれている大島紬。
自然に敬意を表し柄を織り込む。世界でも類いまれな技術で織られる。
その美しさの裏には、機会では不可能といわれている繊細な技術がある。
染められた縦糸とよこ糸を組み合わせ、まるで小さな点を集めて絵を描くかのように仕上げるという見事な柄。糸一本分のずれも許されない。
そんな本場奄美大島紬の工程のひとつに「泥染め」があります。
泥染め
Amami Earth Color “Dorozome”
泥染めは地球の色。
地球からの恩恵に感謝し、その環境を守り次の世代の子達へ伝えていかなければなりません。
泥染めに携わる者として、大事に大事に後世へ引き継いでいきたいと思います。
テーチ木



染めの原料となるのは、まずはシャリンバイという木をチップにし、煮出すことから始まる。
和名:車輪梅 (奄美の方言:テーチ木)泥染めと言葉で聞くと、泥で染めると思われがちですが、まず最初にこの木を用いた染料で染めます。 このテーチ木を使うこと、島の泥で染めることは本場奄美大島紬組合で決まっております。判りやすく伝えると奄美大島の泥染めは、テーチ木に含まれる成分(タンニン)を糸や布に染め付かせ、鉄分豊富な泥田で反応させる技法になります。(泥黒になるまで80回近く染め重ねます)
テーチ木は梅に似た白い小花、花の形が車軸のように見えることから、この名が付いたとされています。
海岸付近に自生するバラ科シャリンバイ属の常緑木で、乾燥や大気汚染に強く、奄美でも防潮林・防風林として畑や敷地の垣根などにも多く使用されています。島の自然、土壌で育ったテーチ木は本土と比べ大きく育ち、幹は直径30㎝程のものもあります。海岸沿いの主に東向きの朝日を浴びて育つテーチ木が、タンニンを多く含むという説もあります。
お茶やワイン、柿等の様々な植物に含まれるタンニン酸は植物が身を守るための防衛物質だと考えられています。植物も、細菌、ウイルス、真菌類から身を守らなければなりません。奄美の場合は強い風や潮などの環境下と、島の土壌による影響で濃度の高いタンニンを含むテーチ木が自生しているということです。このテーチ木を、おおよそで樹齢10年以上の物を、根は残し、幹の部分を選んで伐採し、煮出す準備をします。






1000斤釜(約600kg)のテーチ木をチップにして入れ、1~2日目両日で合計16時間以上この大釜で煮出します。燃料は、前回炊き終えたチップを乾燥させ薪代わりにします。テーチ木の木灰は郷土菓子の灰汁巻きや、畑に巻いたりします。煮出しているときは、少し甘い香りが工房に広がります。2日焚いた後は、かご状に入ったチップを引き上げ、水を足し、再度煮ます。煮出し終えた染料は10日間ほど自然に冷ましていきます。その間に空気中の微生物により自然に発酵していきます。 この発酵によりアルカリ性から酸性に変わります。染料は粘り気のあるとろみを帯び、独特ににおいがします。





テーチ木染め









テーチ木の染料はタンニン、染色の濃度を上げるために石灰水(アルカリ)を用い、中和させて染めて行きます。石灰水がテーチ木のタンニンをくっつける接着剤の役割です。常温での染色となるので、素手でしっかりと揉み込み染色していきます。素手で染めるのは、糸を切らないようにと、手の染まり具合で染料の染まり具合を見るためです。石灰はその昔、珊瑚の死骸を焼いて砕いたものを使っていたとも言います。
このように、テーチ木は600キロに出すことで強い染料を作ることが出来ます。
島に代々伝わる製法です。
この作業を何度も繰り返し、茶褐色に染めていきます。
泥染め



テーチ木で染めた茶褐色の糸を、泥田へ……。
泥染め用いる島の泥は・粒子が細かく、丸い・自然界にある鉄分が豊富などの特徴があります。
水田のようなところの地面を掘ってくぼみ状にし、周辺にある泥をたし入れ、鉄分の濃度を高めます。粒子が細かいのは微生物の作用によるものです。染めに使用する田は、切り立った山裾にあり、雨で山の栄養分がこの田に流れ込むことで、微生物の餌となり、活発に活動します。
こもりの下にたまった泥を足で攪拌して、テーチ木で染めた糸を揉みこみます。その際に細かな鉄分が、テーチ木のタンニンと結合し黒っぽい褐色に染まっていきます。これが泥染めです。タンニンと鉄分が結合することで色は安定し、しなやかになるのです。
※テーチ木で染める➡泥で染める この作業を3~4回繰り返すことで、あの大島紬の独特の黒色を生み出すのです。


